平成17年12月20日
第100回記念電子セラミック・プロセス研究会
& 日本電子材料技術協会 2006年新春合同講演会
日時 平成18年1月28日(土) 10:00 〜 18:00
場所 湘南工科大学・東京キャンパス
東京都港区三田3-7-18 糸山タワー7階
特集テーマ;「新年を飾る有望ナノテク材料とデバイスの開発動向」
座長:岸 弘志(太陽誘電(株))
17-100-570 化学的共沈法による巨大保磁力を有するCo-Ni系スピネル微粒子の諸特性
山元 洋(明治大学理工学部) (10:00-10:45)
17-100-571 電子セラミックスへの招待
一ノ瀬 昇(早稲田大学理工学術院) (10:45-11:30)
昼食 (11:30-12:30)
座長:杉原 淳(湘南工科大学)
17-100-572 LOCAL INDUCED POLARIZATION IN MODIFIED FERROELECTRIC CERAMICS AND THIN FILMS
Prof. Andris Sternberg, Univ. of Latvia Riga, Latvia (12:30-13:10)
座長:山本 孝(防衛大学校)
17-100-573 強磁場印加法による非鉛圧電体材料の結晶配向について
土信田 豊(太陽誘電(株)) (13:10-13:50)
17-100-574 積層セラミックス部品の技術動向
佐藤茂樹(TDK(株)) (13:50-14:30)
17-100-575 多元エネルギー変換セラミックスの創製
山田 浩志(産業技術総合研究所) (14:30-15:10)
第1回 岡崎功労賞(岡崎清記念会)授与式 (15:10-15:25)
コーヒーブレイク (15:25-15:35)
座長:山下 洋八((株)東芝)
17-100-576 最近の低温共焼結基板材料の開発動向
杉本安隆(村田製作所) (15:35-16:15)
17-100-577 高機能セラミックス材料用ナノ複合粒子および複合化装置について
—2005年日本セラミックス協会表彰講演—
猪ノ木雅裕(ホソカワ粉体研究所(株)) (16:15-16-55)
17-100-578 炭素繊維複合材料適用の現状と将来
京野 哲幸((株)東レACM技術部) (16:55-17:40)
なお研究会終了後18:00より、同ビル1階レストラン(イルフィーロ)において懇親会を開きます。会費は1,000円です。奮ってご参加いただき討論をお続け下さい。
今回担当幹事 山本 孝(防衛大学校)
山下 洋八((株)東芝)
講 演 概 要
「化学的共沈法による巨大保磁力を有するCo-Ni系スピネル微粒子の諸特性」
明治大学理工学部 山元 洋
近年,記録メディアの情報量は急激に伸びつづけており,磁気テープのさらなる高密度化,大容量化が強く望まれている。Coフェライトは他のフェライトに比べ結晶磁気異方性定数K1が大きく,より微細な粒子でも,超常磁性になり難く,磁気特性が低下しにくい特徴を持つことが報告されている。これまで著者らはCoフェライトの一部をNiで置換したCo-Ni系スピネルフェライト微粒子について研究を行い,モル比n { = Fe3+/(Co2++Ni2+)},pH条件等の作製条件の変化による500kA/m以上の高保磁力を持つ微粒子の諸特性について報告してきた。
そこで本講演では,まずCo-Ni系並びにCo-Niスピネルフェライトの一部をMn,Y,Crで置換したCo-Ni-(Mn,Y,Cr)スピネルフェライト微粒子を化学的共沈法により作製し,これら微粒子の諸特性について話す。また,Co-Ni-(Mn,Y,Cr)スピネルフェライト微粒子には超常磁性粒子が混在しているため,この粒子を希硫酸でエッチングして除去することを考え,種々検討した結果,スピネルフェライト微粒子としては世界最高の保磁力1400kA/m得られた.これらの微粒子の異方性定数K1,K2,異方性磁界HAを測定し,特にHAは非常に大きいことが知られたこと等を講演する。
「電子セラミックスへの招待」
早稲田大学理工学術院 一ノ瀬 昇
今から20年前の1986年3月17日に当時の防衛大学校 教授 岡崎 清編著で森北出版から掲記のタイトルで本が出版された。 演者も著者の一人として圧電セラミックスの章を担当したが、出版から20年が経過し、電子セラミックスの世界はどう変化しただろうか。
岡崎先生は第1章で電子セラミックスの歴史について書かれており、その中で日本は日本式Total Technologyによってアメリカの技術を圧倒し、商品としての質と価格の競争では圧投的な勝利を収めたと書かれている。 先生が存命なら、その後はどのように書かれるだろうかと想像しながら、20年間を振りかえってみたい。
LOCAL INDUCED POLARIZATION IN MODIFIED FERROELECTRIC CERAMICS AND THIN FILMS
Andris Sternberg
Institute of Solid State Physics, University of Latvia, 8 Kengaraga Str., LV-1063, Riga, Latvia
Composition-structure-properties relationships were studied in modified compositions of lead zirconate titanate and lead magnesium niobate families using wide frequency range dielectric spectroscopy and atomic force microscopy. Samples under investigation were relaxor PLZT 9.75/65/35 ceramics as well as BaTiO3, PbZrO3 and modified lead zirconate titanate PbZr50,47Ti0,3O3 thin films and heterostructures on Si/SiO2/Ti/Pt or MgO single crystal substrates.
Dielectric properties of the samples were studied by means of traditional impedance bridge measurements and supported by non-linear low-frequency digital Fourier dielectric spectroscopy to identify specific glass-ferroelectric behaviour of active material and the role of interfaces or passive layers operating under variable DC bias and AC driving conditions. Spatially resolved piezoresponse imaging of poled regions and polarization switching response in various granular polar ferroelectric or relaxor thin films with and without top electrodes was studied using atomic force microscope operating in modified multi-pass regimes combining voltage lithography mode with immediate testing of local surface potential and piezoresponse profiles.
Observed differences, electrode edge contribution and relaxation of locally induced piezoresponse is interpreted in terms of size effects on local polarization, presence of defects, charge accumulation and local conductivity.
「強磁場印加法による非鉛圧電体材料の結晶配向について」
太陽誘電(株)総合研究所 材料開発部 土信田 豊
非鉛圧電体のBi層状化合物(BLSFs)のBi4Ti3O12(BIT)、タングステンブロンズ型化合物(TBSFs)の(Sr,Ca)2NaNb5O15などは、圧電特性の結晶異方性が大きい。セラミックで利用するには、結晶配向を制御することが必要である。これまで、粒子形状を利用したTGG法など多くの研究がなされてきたが、圧電特性を示す方向に選択的に配向させることは難しかった。
我々は、非磁性の強誘電体でも結晶構造による磁気異方性を持つと考え、粉体を分散し強磁場を印加して成形後、焼成する方法により、BLSFsや、TBSFsで結晶配向させることに成功した。本講演では、BITの粉体の粒径と結晶性と結晶配向の相関に着目した磁場配向の制御因子の探索、および、Sr2NaNb5O15で、磁場印加方法を工夫し、一軸配向した焼結体を得るとともに、圧電特性と配向度の関係を調査した結果について述べる。
積層セラミックス部品の技術動向
佐藤茂樹 TDK株式会社 テクノロジーグループ プロセス技術開発センター
電子機器の小型化・高機能化のキー・テクノロジーとして電子部品の小型・高性能化が挙げられる。最新の携帯電子機器の中を見てみると、半導体技術の進歩に目を奪われがちであるが、抵抗、コイル、コンデンサーのほとんどの部品がSMD化され、高密度実装に大きく貢献していることに気がつく。特に、インダクター、コンデンサーは積層技術を駆使し、ここ数年小型・低背化を著しく発達させたセラミック電子部品である。今回は、積層部品の代表であるインダクターおよびコンデンサーに関して、電子機器から要求される小型・低背化、高特性化、高信頼性化などの技術動向を整理し、次に、それら要求特性を満足するために、材料技術、プロセス技術としてどの様な開発が行われているのか紹介する。また、今後の電子関連分野の技術動向より、積層電子部品に必要になってくる材料・プロセス・評価技術について議論する。
多元エネルギー変換セラミックスの創製
産業技術総合研究所 実環境計測診断研究ラボ
山田浩志、王旭升、今井祐介、西久保桂子、徐超男
著者らの研究グループは、応力発光体と呼ばれる外部から与えられた械的的な力学エネルギーによって光を発する新しいセラミックス材料の開発に世界で最初に成功し、光学的に応力センシング可能なスマートマテリアルとして内外から多くの関心を集めている。応力発光体はその結晶構造において反転対称性を持たないことから圧電性も有すると考えられているが、結晶対称性が低くドメイン構造が複雑なため圧電センサやアクチュエータへの応用は困難であった。最近著者らはペロブスカイト型酸化物を母体とする新規の応力発光体を開発することに成功し、さらにこの応力発光セラミックスが分極処理後に巨大な電歪効果と電場発光を示すことを見出した。この実験結果はこのセラミックス材料が新規のアクチュエータやセンサの基盤材料として大きな可能性を秘めていることを意味している。本講演では応力発光体の基本特性の説明を交えながら、この新規の応力発光体のもつ多彩な物性について紹介する。
「最近の低温共焼結基板材料の開発動向」
村田製作所 材料開発センタ− 杉本安隆
無線通信技術の急速な進展により、LTCC(低温共焼結セラミック)基板は無線通信技術における高周波回路の小型化、低損失化を実現する有望な技術となっている。LTCCは無機絶縁体や誘電体を主成分とし、ガラス系材料を加え、1000℃以下の温度で焼成することによりAgやCuの低抵抗導体との共燒結を可能にし、高周波化に対応した回路形成を可能とする。ミリ波帯域におけるフィルタ等においては導体の抵抗損失の他に誘電体自体の誘電損失を小さくすることが重要となる。これには低温焼結助剤であるガラス成分を焼結後結晶化させて低い誘電損失の結晶を析出させることがポイントとなる。一方、高機能配線基板においては高い寸法精度が得られる拘束層を用いた無収縮焼成法が適用されるようになって来ている。さらに容量や抵抗を内蔵する試みもされており、今後、受動部品の内蔵化による小型化、集積化が益々進むと考えられる。
「高機能セラミックス材料用ナノ複合粒子および複合化装置について」
2005年日本セラミックス協会表彰講演
(株)ホソカワ粉体技術研究所 猪木雅裕
セラミックス材料で用いられる粉体には,天然材料や単・複組成酸化物が用いられているが,製品の特性などを向上させるために各種粉体の複合化の試みが行われている。同一物質の場合には,ナノ粒子はバルク材料と異なる化学的,機械的,電気的,磁気的特性などを有し,その適用方法が現在注目されている。産業用素材としてナノ粒子の応用が期待される分野には,電子デバイス,環境,ポリマー,フィルム,バイオメディカル分野などがあるが、高次な特性を持ったナノ粒子を安定的に大量に製造することや,複合化することは容易ではなく,大きな課題となっているのが現状である。これらに対し,弊社ではプラズマを利用したナノ粒子製造技術およびナノ粒子などの固体微粒子を機械的なエネルギーで複合化する技術を開発し,現在これらの応用展開を進めている。本講演では、それぞれの技術的な特徴、性能、実施例等について紹介する。
炭素繊維複合材料適用の現状と将来
(株) 東レ ACM技術部 航空・宇宙技術室 室長 京野 哲幸
工業生産開始から30数年を経て、近年炭素繊維の市場は大きな成長期を迎えつつある。本講演では、炭素繊維の技術開発、用途開発の歴史を振り返るとともに、航空機、スポーツ、一般産業分野での炭素繊維複合材料適用の現状と将来展望について述べる。